YeYe『ひと』INTERVIEW


海外メディアbeehypeでのインタビュー日本語原文です。

レミ街『THE DANCE WE DO 2016』LIVE REVIEW

 2016年4月3日 『THE DANCE WE DO』 愛知県名古屋市 中村区文化小劇場


音の粒子が一つ一つ確実に打ち込まれ、また拡散していく。名古屋のバンド、レミ街の音楽性をどう例えたらいいか。シティーポップ、チェンバーポップ、フォーク、アイリッシュ、エレクトロ・ミュージック、様々な要素が溶け合い、相互に高めあっていく。

miuracamera

CRUNCH"blue blue blue" REVIEW

名古屋のガールズ・インディー・ポップ・バンドCRUNCHが各地で話題となっている。グロッケンの響きが美しいメロディアスなリード曲「blue」は昨年11月に公開されるや複数の海外メディアで取り上げられ、PitchforkのライターPatrick St. Michelのサイトでは年間ベスト・ソングにも選ばれた。

beehype Best of 2015

beehyoeは2014年3月より始まった世界中にライターを擁するレビューサイトです。
参加者の間で協議しながら世界中のインディーミュージックを紹介しています。

今年もそのbeehypeで世界各国の年間ベストリスト(英文)の発表が始まりました!
(こちらは昨年のリストです。なんと47 か国にも及んでいます)

Best of 2015

ゆだち INTERVIEW

ゆだちのギター、ヴォーカル三嶋佳祐さんが新作MV「 (die staadt) Norm」における文学やアートからの影響について語ってくれました(海外メディアbeehypeのレビューで引用)。

以下の内容は「作品の意味や答え」「作家のメッセージ」ではなく、あくまでインスピレーション元ということです。ゆだちの音楽を楽しむうえで、こういったことも参考になるくらいでお考えください。

ゆだち『夜の舟は白く折りたたまれて』

今作はレコーディングとミックスは全てメンバーの手によって行いました。KORGのD-3200という32トラックのMTRを使い、ほぼ全ての素材を録音しています。場所もレコーディング用のスタジオは使っておりません。メンバーの家や、普通のリハスタを使用して録音しました。そういう意味ではかなり純粋な意味で自主制作音源と言えると思います。」





タイトルはドイツ語です。これはドイツの作家ミヒャエル・エンデの『だれでもない庭』という未完の物語に出てくる都市の名前「ノルム(規格、基準などの意)」からきています(物語中ではあらゆる個性や想像力、夢をみることが人々から失われた街として描かれます)。

タイトルのカッコ内を英語にすると「(The City) Norm」となります。Cityは本来Stadtですが、Staadtという表記になっているのはフランスの作家マルグリット・デュラスの小説『ユダヤ人の家』からの影響があります。

MVを逆再生にしたのは、同じくエンデの『モモ』に出てくる〈さかさま小路〉のアイデアからひらめきました(全てが逆方向に進む道のことで、これを抜けると〈どこにもない家〉に辿り着くという章があります)。

また、歌詞の中には須賀敦子の著書である『ユルスナールの靴』が出てきたりもしていますが、そうした様々な書物から見えた連関を結んでいくようにしてこの曲は生まれました。そのままタイトルや歌詞の上で引用されているものは数冊くらいですが、もっと多くの着想元が自分なりにはあります(これはこの曲に限らず、アルバムを通してのことですが)。


アートからの影響となると、もう少し僕自身の考え方や、作品上では目視できない部分に話が接近してくるので、ひとまず文学作品からの影響というのが今回の曲に関係する話としてはわかりやすいかな、と思います。」


ゆだち ホームページ

Deerhunter "Fading Frontier" INTERVIEW

Pitchfork Interview with Bradford Cox HERE



Pitchforkのインタビューを基に私の批評を加え再構成した内容です。発言についてはニュアンスで再現しており、原文通りではありません。


Deerhunterのブラッドフォード・コックスは語る。

“Shelia”(2009年のAtlas Soundの曲)ではキャラクターを演じてたんだ。『誰も一人では死にたくない』と歌った。でも本当は公衆の面前で死にたくなんかないんだ。」

これはDavid Bowieの曲”Jump They say”を意識しているのだろうか。というのも続いて。

Looprider INTERVIEW

Ian F Martin interviewed Ryotaro Aoki from Looprider HERE in English.

日本と海外の音楽シーンの違い、ポップとは? ポストパンクとは? そもそも芸術が人々にもたらすもの、その意味とは?  実に興味深いインタビューだ。


余命百年 INTERVIEW

Their name means "Rest of Our life is one hundred" . Japanese Young alternative rock band.
初の流通盤『二十二世紀からの手紙』をリリースし、自主企画を控える余命百年にインタビューした。
余命百年(Yomei Hyakunen)

  MV「テンプテーション・ダンス」は、80年代ファンク・ディスコを90年代以降のオルタナティヴ・ロックの感性で再解釈したかのようで、メロディーからは70年代の伝統的なフォークの香りが漂う。一聴、物憂げな雰囲気の底からは、しかし熱いソウルを感じる。逸材だ。

group_inou INTERVIEW

BELONGbeehypeによるgroup_inouのインタビュー。beehype版の翻訳です。



ダンサブルなトラックと無意識からくるラップで、日常の生活のなかでの人々の欲望や苛立ちを暴く。彼らの音楽はある種、現代の儀式だ。

Deradoorian "The Expanding Flower Planet" INTERVIEW

親しみと違和感の絶妙なブレンド。東洋的なメロディーがCANなどのクラウトロックを思わせる反復ビートに呑み込まれていく。Dirty Projectorsの元ベーシスト兼ヴォーカリストAngel DeradoorianがDeradoorian(デラドゥーリアン)名義でリリースした初のフル・アルバムについてライブ・レビュー、続いてインタビューしました。


tigerMos Yusuke Ikeda's favorite

tigerMosのギター・ヴォーカル、イケダユウスケが語るお気に入りの作品です。


レミ街 2015/7/20 Tokuzo,Nagoya LIVE REVIEW

雑誌MUSICA2015年8月号のインタビューで、サカナクションの山口一郎が

「アンディー・ウォーホールのファクトリーみたいな、いろんな人達が複合的に集まって、自然にこの人のMV撮ろうよとか、アー写今度やってあげるよとか、そういった現象が起きるような空間がちゃんと認められていくようにしないと、新しい未来の音楽に嫉妬できない 」

と語っているが


去る2015年7月20日、海の日に名古屋でおこなわれた4階建ての美容院をフルに使った音楽イベント『 (N)ICI MUSIC DAY!!』(ナイスミュージックデイ)はまさにそんなイベントだった。

Renge INTERVIEW


レンゲ (renge

2013年より作曲、自宅録音とライブ活動を始める。
ガット・ギターと耳元に届くような歌声が心地よい、素朴な窓辺のアシッド・フォーク。

これまでにタラ・ジェイン・オニールGofishトリオと柴田聡子昆虫キッズらと共演。

gotch(from ASIAN KUNG-FU GENERATION ) INTERVIEW

以下は海外メディアbeehypeが『Best of 2014 JAPAN』用に取材した内容です。

吉田ヨウヘイgroup INTERVIEW


海外メディアbeehype用の吉田ヨウヘイgroup(Yoshida Yohei Group)インタビュー原文です。

Lullatone INTERVIEW


Lullatone 
アメリカのルイヴィル出身のショーンは日本の名古屋に来て、冨田淑美とララトーンというエレクトロニカ・デュオを作り、結婚した。 2003年からたくさんのアルバムとEPを作った。これは季節の4部作の最後のピースだ。

Jim O’Rourke"Simple Songs" REVIEW

  ジム・オルークのチェンバー・ポップ編成での新作をくりかえし聴いている。前野健太、石橋英子、カフカ鼾とプロデュース、コラボレーション作が続いていたが、ついにジム・オルーク本人がヴォーカルをとったリーダー作だ。珍しい楽器、手法や即興を繰り返し突き詰めた上でシンプルかつポップなメロディー、うたものに回帰したのが近年のジムの作風。本作は50年代以前のアメリカン・ポピュラー・ミュージックを思わせる壮大なアレンジと、ジムが愛するレッド・ツェッペリンのようなクラシック・ロックが持っていたグルーヴ感が全編を貫いている。

伊達伯欣『からだとこころの環境 ―漢方と西洋医学の選び方』REVIEW


はっぴいえんどの『風街ろまん』は、1964年のオリンピック開催に向けての都市開発で様変わりする前、メンバーが幼少期に過ごした東京の原風景を歌ったといわれ、80年代シティー・ポップの源流の一つとされている。対して10年代シティー・ポップはバブル以降に生まれた、あるいは物心ついた世代が、残された音楽や資料から当時の雰囲気を追体験する営みだという捉え方もできる。しかし話はそう単純ではなく、かつて存在したきらびやかな都会での暮らしを素直に模写するのか、かつての繁栄を思い描いたうえで開発の末に行き詰った社会とその先を見つめるのかで全く意味は変わってくる。バブルの幻影にすがり再開発し続けるのか、景気の低迷や人口の縮小に見合った自然な形で都市を再利用するのかとも言い換えられる。

Malerai Uchihashi Maya R "Utsuroi"(移ろい) INTERVIEW



“『移ろい』のテーマは、「日本語という言語を通して知覚する世界」です”。 

シンガーMaya Rは語る

言い換えれば、このプロジェクトでは、日本語によるサウンド・イメージが大切ということだ。このアルバムを聴けば、日本文化を知ることができる、あるいは日本へ旅することができる。

レミ街"THE DANCE WE DO 2015"LIVE REVIEW

 

四季の変化を表すVJと共に、照明で様々に表情を変える、造形作家、高橋政行による植物をモチーフにした巨大オブジェが舞台の中心に据えられている。今夜の中村文化小劇場は満員御礼。名古屋のチェンバー・ポップ・ユニット、レミ街のヴォーカル深谷彩に従うのは、勇壮な中学生9人のコーラス隊と、花開くようにステージを飛び交う『ダンススタジオ『AMS(アムス)』』のダンサー8人。『人形劇団パン』が主催し、ミュージカルとして見事に統制されている。

穂高亜希子『みずいろ』LIVE REVIEW

 息が止まるかと思った。1曲目「恋をした男の子」の歌い出し、アコースティック・ギターと声が、透き通る氷のナイフのように胸を突く、でも「緑」で歌われるように“全てが幻覚”だから痛みはない。柔らかな「光」が差すように熊坂るつこのアコーディオンが寄り添う。ギターからピアノへ移って「水色」を歌い出した頃に気づく。穂高亜希子の声は幼き日、故郷の草原に降る雨のように暖かい倍音だ。

Nicholas Krgovich + Deradoorian Japan Tour 2015 LIVE REVIEW


 極上のハリウッド映画でも観た気分にさせられてしまった。アメリカン・トラッドを伴奏に日本の神代の儀式、続いて能や浄瑠璃を思わせるような中東のミュージカル、最後は20世紀初頭のアメリカのラヴ・ロマンスへ。鶴舞K・Dハポンで行われたニコラス・ケルゴヴィッチとエンジェル・デラドゥーリアンの来日公演を体感した。


マラカス、ドラム・パッドも組み合わせての反復リズムから高揚感を生む。パーカッションとドラムスの2人を従えて、呪術的なファルセットで歌い上げたのは、アメリカ帰りのフォーク・シンガー、名古屋公演のゲスト・アクト、tigerMosイケダユウスケ。アコースティック・ギターの弦が切れたのを迷わず引きちぎって強引に演奏を続けたイケダは古代の荒ぶる神々のようだった。

Goat"Rhythm & Sound" REVIEW

心臓のビートに直接訴える、踊れる、徹底的に無駄を削ぎ落とされ反復するリズム。OGRE YOU ASSHOLEの12インチ「見えないルール」を聴いた時感じたことが、goatの新作でより突き詰められた形で表現されていた。

 インストでギター、ドラム、ベース、サックスという編成で、メロディー楽器を強制ミュート、ときにドラム・ソロに聴こえるほど。手数、音数自体も絞ってリズム、ビートの骨格を強調する。80年代にEP-4が行ったような音の実験と重なる。同じリズムの繰り返しが続き、気持ちいいフックとなるメロディーが鳴らされそうで鳴らされない。だからこそちょっとした瞬間のギターの煌めき、サックスの一吹きから至上の快感がもたらされる。

Sufjan Stevens "Carrie & Lowell" INTERVIEW




"Carrie & Lowell" Streaming  HERE (試聴)


 教会の大聖堂を漂うゴースト(聖霊)のように透明に響き渡る声とアコースティック・ギター、つかみ所がなく実体がはっきりしないようでその軌道は天まで届く、神の国へ続いていく。サイモン&ガーファンクルのようでどこか違うのは、ピアノ、オルガンに随所にシンセサイザー、パーカッションなどの効果が加わり、現代のインディー・エレクトロニカ、R&B、オーケストラル・ポップを通過した地点から鳴らされているからだ。スフィアン・スティーヴンスの5年ぶりのアルバム『Carrie & Lowell』は彼のごく個人的な物語でありながら、期せずして音楽の歴史を俯瞰し包み込むものになっている。

 文中の発言はザ・ガーディアン、ピッチフォーク・メディアのインタビューより引用。内容自体も参考にしています。

岩崎だもみ/スティーブジャクソン LIVE REVIEW



岩崎だもみ(Damomi Iwasaki)さんというシンガー・ソングライターを観ました。

鶴舞ハポンのブッキング・スタッフでもある、スティーブジャクソンのモモジさんが

「音楽続けてください。いやな気分にならない痛さというか、その声、好きなんだよね。」

と仰っていましたが、もう、それがすべてだと思いました。

tricot "A N D" INTERVIEW





以下は海外メディアbeehypeで行ったtricotインタビュー原文です。

りんりんふぇす 2014 LIVE REVIEW





りんりんふぇす - みんなちがって みんないい 2014年12月7日
出演 Gotch, 三輪二郎, あだち麗三郎クワルテッット, ソケリッサ, 新倉壮朗, 寺尾紗穂

「わたしの大切な人は片手の無い人 全力で抱きしめる人」。

厳かな、しかし凛としたよく通る声でそう歌われたら、そりゃびっくりする。親子連れが多く子どもの声も伴奏になる雰囲気のなか、ピアノ弾き語るは寺尾紗穂、彼女が主催する『りんりんふぇす』の一場面だ。

Trupa Trupa INTERVIEW



Trupa Trupaはポーランドの4人組ロック・バンド。20 Jazz Funk Greatsが運営するUKのレーベル《Blue Tapes》から2015年3月に新作CD/カセットをリリースします。

(注; 20 Jazz Funk GreatsはPitchforkのスピンオフサイトAltered Zonesの共同運営者)

Web / facebook / bandcamp / Soundcloud

Awakenings

映画『レナードの朝』(Awakenings)を観ました。

ランディー・ニューマンがサウンドトラックを担当し、ゾンビーズの「Time Of The Season」が使われていることで興味を持ったのですが、神経内科医オリヴァー・サックスによるノン・フィクションの、フィクションによる映画化だったのですね。

嗜眠性脳炎(眠り病と呼ばれていた)の患者レナードに当時の新薬ドーパミンを投与したら、 30年ぶりにはっきり覚醒し活動できるようになったが……。以降ネタバレ含みます。



CRUNCH INTERVIEW & Clear And Refreshing Top 20 Releases of 2014

The Japan times、The Guardian等で執筆する英国ブリストル出身の音楽ライター、イアン・マーティンが選ぶ2014年日本の20枚より。


日本のジャーナリズムにおいてCRUNCHはしばしばニューウェイヴ/ポストパンクの文脈で語られている。しかし彼らは見過ごしている。90年代J-POPはニューウェイヴから生まれたことを。 Mr.childrenはエルヴィス・コステロに影響を受けているし小室哲哉のTM NETWORKはシンセ・ポップやPlasticsにルーツがある。 Plasticsの佐久間正英はGLAYやJUDY AND MARYのプロデューサーで、JUDY AND MARYのルーツはパンクだ。

渋谷系ミュージシャンはElやPostcoardのようなポスト・パンクのレーベルに憧れていた。決定的に日本オリジナルな椎名林檎でさえ福岡のパンク・シーンに影響されている。そのシーンにはNumber GirlやPanic Smileがいた。Panic Smileの現在のドラマー松石ゲルが彼女らの作品を録音したのだ。

CRUNCHは疑いようもなくJ-POPバンドだ。ただしパラレル・ワールドのJ-POPだ。その世界では奇妙さが保たれている。アイドル・バンドではなく想像力を持ったバンドがいる。 CRUNCHは消えつつある懐かしいポップ・ミュージック。彼女らは熱心なリスナーでもある。古典的で職人気質なソングライターだ。一聴しただけでは分からないが何度も聴くうちにしだいに明らかとなる。複雑でテクニカルな音楽ではない。熟慮され静かな想像力をたたえた音楽だ。

「Awakening」は、彼女らのキャッチーなメロディーとオフビートなアプローチの融合を示す好例だ。君を夢中にさせ、曲をリピートさせるだろう。どんな曲構成なのか考えさせる。ヴォーカルはシンプルに飛び跳ね、コード進行はストレートだ。しかしブレイクでリズムが移行する。循環コードが中断される。何か不思議なことが起こっていると考えるに十分だ。

2014年にCRUNCHは「Simple Mind」EPをリリースした。まださらに期待できるはず。希望にみちたポップ・ワールドは彼女らのためのスペースを空けて待っている。


Hatis Noit(ハチスノイト) INTERVIEW


世界中のインディーミュージックを紹介する巨大メディアbeehypeのインタビューの原文です。

日本のロック・メディアが選ぶ2014年ベスト・アルバム / JAPAN

Japanese Music Media's choice
日本のロック /インディー・ミュージック寄りの音楽メディアのランキングを基に独自のベスト・リストを作成しました。ある程度大衆を意識したミュージックマガジン、ムジカのチョイスを基に、クッキーシーン、サイン・マガジン、エレキング、そして私が関わったビーハイプでの評価を相対的に考慮しています。今年を代表し、数年のちまで残るか?ということも考えました。



1. 坂本慎太郎Shintaro Sakamoto『ナマで踊ろう(Let’s Dance Raw)』 

個人的2014年ベスト・アルバム / JAPAN


1. 前野健太『LIVE with SOAPLANDERS 2013-2014』 

LISTEN

ジム・オルークによるプロデュース、ソープランダーズの鉄壁のバックアップを得て、彼は日本の伝統的な歌謡曲を再定義した。壊して生かす。彼独自の身体感覚、言葉選び、リズムで捉えなおす。

ひなたぼっこの中で孤独を共有する会

今から記す文章は1987年の精神神経学会誌よりの引用です。

ある地域、ある病院にかつて存在したデイケアのありようを示す論説です。私がこれを記すのは、こういった考え方が私に安堵をもたらすからであり、同時にある種のアートについて、理想の提示方法だと思ったからです。

振り返って、平凡、非凡に関わらず、いかに多くの似非ポップな表現が他者の居場所を侵食し破壊しようと振舞っているか。そういったことへのささやかなアンチテーゼとなりうると思うからです。



『ひなたぼっこの中で孤独を共有する会』。それは「非」対象化であり、互いの特異性を確認しあうことである。それは真の意味での「他者との交感」「世界との交感」である。 それは革命組織や70年代の学生運動のような「全く同じ思想の共有、深い一心同体の関係」とは趣を異にする。深い関係ではなく、浅く豊かな関係である。その関係の中では「私」はつねに「私」に返される。「あなたのことはあなたでやりなさい」という形での私(個人としての私)ではなく、「俺はあいつとはやはりちょっと違うんだな」と感じる私(特異な存在としての私)にいつも返される。それが相互の特異性、相互の孤独を確認する集まりである。

CRUNCH /Homecomingsと80年代ポップス

京都のホームカミングス「I Want You Back」は彼らなりのクリスマス・ソングだそう。あるイベンターは「名古屋のCRUNCHと京都のホームカミングスをタイバンさせたら合うね」といい、ある友人は「ホームカミングスのギターはジョニー・マーっぽい、ザ・スミスがクリスマス・ソングっぽいのか?」といいます。

ヘルマン・ヘッセ『車輪の下』 -ボーダーラインと創造性

ヘルマン・ヘッセの『車輪の下』を読んだ。

ART-SCHOOLというロック・バンドは、特に初期、歌詞の題材を文学に求めていたが、「MISS WORLD」で歌われている村上春樹『蛍』(あるいは『ノルウェイの森』)と並んで、というかより直接的に「車輪の下」という曲がある。ライヴ定番曲でもある。だから気になっていたし、そもそも古典だ。

ちくさ座『うずうず』でのバイセーシ LIVE REVIEW

2014年12月21日ちくさ座『うずうず』行ってきました。


80年代風ディスコ・トラックとラップ調の語りで市井の人々のリアルを切り取るクリトリック・リスことスギムさん。あたかも様々な人生をDJミックスするかのように彼が叫び、歌い上げた後、次にステージに現れたのは、大阪の4人組バイセーシ。(ki-ft review バイセーシ: 龍 )

tigerMos REVIEW

 シーンの主流からはみ出しているからこそ生まれるトリックやミラクルがある。名古屋のインディー・シーンでも《THISIS(NOT)MAGAZINE》の周辺に、そういった異端かつ奇異なミュージシャンが集まっている。6eyes(シックスアイズ)やMILK(ミルク)のようなポスト・パンク/ハード・コア系のバンドから、ジョンのサンやYOK.(ヨック)のような叙情的アーティストまで様々だが、最近注目されているtigerMos(タイガーモス)は特に変わったユニットだ。アメリカ帰りのSSWイケダユウスケが、レミ街のキーボード/トラック・メイカーの荒木正比呂を誘って結成し、幻想的なフォーク、サイケデリア、エレクトロニカを折衷したサウンドをバックに、優しく滋味深いファルセットで歌い上げる。

COOKIE SCENE REVIEWジョセフ・アルフ・ポルカ「天声人語」より)

より大地に根ざしたAriel Pinkというか、名古屋のRadioheadというか、こういった比喩は凡庸で、往々にして正確ではないのだけど、そう例えさせてください。tigerMos(タイガーモス)のライヴ観てきました。彼らは来年2015年、ついにアルバムをリリースするとか。

Atoms for Peace Osaka Nov.19 2013 LIVE REVIEW



Atoms for Peace 2013.11.19@ZEEP難波公演に寄せて


  昨今のトム・ヨークは「今が世界の終末」だと必死に伝え続けている。だからこそ「僕たちは踊り続けなければいけないし、精一杯笑わなければいけない」とも。妄想かもしれませんが、これはアトムス・フォー・ピースのライヴを観て私が最も強く感じたことです。

  乾いたパーカッションと胸にどっしり打ち下ろすドラム、加えて奏者の体ごと踊り狂うベース・ライン。原始宗教の儀式を思わせるエレクトロ・ファンクは、いちいち芳醇なグルーヴが断章する。途切れ途切れの完結しないコード進行が積み重なり組み合わさって、結果として私たちに奇妙な多幸感をもたらす。バンドの音が一体となり炸裂する瞬間にはパンクの初期衝動も感じるし、トムがピアノを弾けば何より美しくメロウな空間が現れる。ライヴでは原曲の持つ親しみやすいメロディーがより強調されている。そして吹っ切れたダンスとMCといったら! 冒頭から切れまくりのトムのしっちゃかめっちゃかなダンス。 対照的に明るく勢いのあるMCは『The Bends』期のステージを思わせる。強靭なリズム隊にシンクロして、唄声ももちろん終始張りがあるのだ。トム、若返った?

  途中でトムがベースのフリーと抱き合ったり、そう、この雰囲気はこの儀式は祝祭なのだ。中盤、ある曲ではトムが手拍子を煽り、ある曲ではオーディエンスから自然に手拍子が沸き起こる。かつてトムは「いい音楽は感情を操作したりはしない。それは『OK computer』で僕らが完璧に間違っていたことだ」と語ったけれど(SNOOZER#44より)、ファンキーに歌い踊るトムはなんだかチャーミングで、今の彼はとにかく私たちをハッピーにさせるのだ。深刻な雰囲気を強制するのではなく、ただ、こちらのストレスを和らげてくれる。そしてその場にいる誰もがおのずから笑みをこぼしていた。終始現代を覆う圧倒的な不安、そして恐怖。こういった感情は逃れがたく苦痛だ。だからユーモアで空気抜きする。

 彼らの音楽には一定のリズムの繰り返し。様々な和音の絡み合いが特徴的な形で現れる。その一つ一つの断片は「怒り」の感情であったり、「哀しみ」、「不安」、そして「焦燥」であったり、時には「孤独」や「絶望」、「虚無」の感覚であるかもしれない。一般的にひとはそういった感情が積もり積もると、突然怒鳴り奇声を発したり、衝動的な暴力をふるう。様々な負の感情で頭の中がまとまりがなくなってしまうと、それが叫びであれ暴力であれ、一つに集約することでその負荷を発散しようとするのだ。そしてコントロール不能な状態に陥れば、それは精神病だ。
 しかしだ。心にずっしりと溜まったわだかまりを、叫びとヴァイオレンスではなく、音楽とダンスという形に集約させ、笑いに落とし込むことができたら、それが最も原始的な音楽の形態であり、同時に全てではないだろうか。そもそも「音楽」とは音を楽しむと書くし、アトムス・フォー・ピースはAtomsという単語の中にトム(Tom)を含む。だからアトムス・フォー・ピースはトムそのものだし、素晴らしい音楽とは、ときに人を戦慄させ、涙を流させて、最終的に笑顔に変えるものだと思います。

  『KIDA/Amnesiac』のツアーでは、世界の終わりの到来をシリアスに厳かに伝えようとしていたトム・ヨーク。世界の終わりが誰の眼にも間近な今は、徹底的に明るく力強く、終わりを否定しようとしているように思えた。


参考映像 2013.10.13 Atoms For Peace Live at ACL Festival Special Show