The Japan times、The Guardian等で執筆する英国ブリストル出身の音楽ライター、
イアン・マーティンが選ぶ2014年日本の20枚より。
日本のジャーナリズムにおいて
CRUNCHはしばしばニューウェイヴ/ポストパンクの文脈で語られている。しかし彼らは見過ごしている。90年代J-POPはニューウェイヴから生まれたことを。 Mr.childrenはエルヴィス・コステロに影響を受けているし小室哲哉のTM NETWORKはシンセ・ポップやPlasticsにルーツがある。 Plasticsの佐久間正英はGLAYやJUDY AND MARYのプロデューサーで、JUDY AND MARYのルーツはパンクだ。
渋谷系ミュージシャンはElやPostcoardのようなポスト・パンクのレーベルに憧れていた。決定的に日本オリジナルな椎名林檎でさえ福岡のパンク・シーンに影響されている。そのシーンにはNumber GirlやPanic Smileがいた。Panic Smileの現在のドラマー松石ゲルが彼女らの作品を録音したのだ。
CRUNCHは疑いようもなくJ-POPバンドだ。ただしパラレル・ワールドのJ-POPだ。その世界では奇妙さが保たれている。アイドル・バンドではなく想像力を持ったバンドがいる。 CRUNCHは消えつつある懐かしいポップ・ミュージック。彼女らは熱心なリスナーでもある。古典的で職人気質なソングライターだ。一聴しただけでは分からないが何度も聴くうちにしだいに明らかとなる。複雑でテクニカルな音楽ではない。熟慮され静かな想像力をたたえた音楽だ。
「Awakening」は、彼女らのキャッチーなメロディーとオフビートなアプローチの融合を示す好例だ。君を夢中にさせ、曲をリピートさせるだろう。どんな曲構成なのか考えさせる。ヴォーカルはシンプルに飛び跳ね、コード進行はストレートだ。しかしブレイクでリズムが移行する。循環コードが中断される。何か不思議なことが起こっていると考えるに十分だ。
2014年にCRUNCHは「Simple Mind」EPをリリースした。まださらに期待できるはず。希望にみちたポップ・ワールドは彼女らのためのスペースを空けて待っている。